結論:“迷ったら境界確定”が基本。売却後に揉めやすいのは、面積や越境の認識ズレです。
現況測量だけだと「だいたいの位置」は分かりますが、隣地所有者の立会いと承諾印を伴う“境界確定測量でないと、将来の紛争予防や融資審査の安心材料としては弱くなります。
1) どんなときに必要?
-
土地を含む売買(戸建・更地・古家付):面積・境界が曖昧だと価格交渉が荒れやすい
-
再建築や外構工事予定:セットバック量・道路種別・敷地後退線の確定が前提
-
越境の疑い(庇・塀・樹木・配管):誰がいつまでにどう是正するかを契約条項化するため
-
金融機関の要請:担保評価で確定測量図が求められることがある
2) 「現況測量」と「境界確定測量」の違い
-
現況測量:目視・既存標識を頼りに現状の境界らしき位置と面積を把握。隣地承諾なし。スピードは早いが、法的・対外的な強さは弱い。
-
境界確定測量:公図・地積測量図・道路台帳等の公的資料を突合し、隣地所有者・道路管理者の立会い承諾を得て境界標を設置。成果として確定測量図が残る。売買・融資での安心度が高い。
期間の目安:案件次第だが1〜3か月程度は見ておくと安全(立会い日程調整や役所照会で伸びやすい)。
3) 費用とリターンの考え方
-
費用:地形・面積・接道状況・越境の有無で幅があるが、数十万円規模になりやすい。
-
リターン:①買い手の不安低下で価格ディスカウントを抑制、②融資承認の通過率が上がる、③決済直前の破談リスクを低減。
→ 「確定コスト < 値引き回避+売却期間短縮による保有コスト圧縮」になりやすく、投資回収しやすい項目です。
4) 実務フロー(型)
-
資料収集:公図・登記簿・地積測量図・道路台帳・都市計画情報
-
現地調査:既設境界標・塀・越境物の有無を確認
-
官民査定:筆界の推定・道路境界の照会
-
隣地立会い:境界点を合意、承諾印を取得
-
境界標設置:コンクリート釘・金属標等で明示
-
成果品作成:確定測量図・座標値・写真、越境覚書(必要時)
5) 契約条項のポイント
-
実測精算:登記面積と実測面積に差が出た場合の単価と精算方法を明記
-
越境・是正:誰が・いつまでに・どの範囲で是正するか、費用負担と未是正時の扱い
-
セットバック:後退面積・位置・費用見込みを記載し、建築可否の前提を共有
6) よくある落とし穴
-
私道持分・通行掘削承諾の抜け:持分割合・承諾書の有無を早期確認
-
道路種別の誤認(里道・水路・位置指定道路):管理者照会の結果で確定
-
測量の“途中止め”:隣地不在・合意難航はよくある。**連絡履歴と代替案(現況売り+条項強化)**を早めに準備
7) 進めるべきかの判断基準(簡易)
-
売出前に確定できる→実施(価格維持と期間短縮が見込める)
-
時間が足りない→現況+条項整備で先に出し、裏で確定を進める
-
越境が重い/合意困難→価格・引渡条件に織り込み、将来是正の枠組みを契約で固定
まとめ
境界は“目に見えない価格要因”。
確定測量はコストではなく保険と捉え、資料→立会い→承諾→成果図の型で前倒し対応を。面積・越境・道路の“爆弾”を先に処理しておけば、交渉は短く、価格はぶれません。