「囲い込み」とは、売主から預かった物件情報を他社へ積極的に開放せず、自社の買主だけで成約(両手)を狙う行為のこと。
露出が絞られるため、内見数が伸びにくく、結果的に値下げ圧力や長期化を招きやすいのが問題です。
ここでは“怪しい兆候”の見抜き方と、事前にできる予防策をまとめます。
囲い込みがもたらす不利益
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競争不足で価格が伸びない:比較検討されなければ“相場の上”が取りにくい。
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販売期間の長期化:反響が薄く、価格改定の履歴が残ると交渉で不利に。
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情報非対称の固定化:売主が市場状況を正しく把握できない。
怪しいサイン(現場で起こりがちな例)
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レインズ登録の遅延/未登録(専任・専属専任なのに証憑の提示がない)
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他社からの物件確認への折返しが遅い/「本日内見不可」の常態化
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ポータル掲載が遅い/写真・説明が極端に少ない(意図的に反響を絞る)
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「すでに申込が入っています」→数日後も掲載が継続(内見を断る口実化)
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自社客での“先行案内”が常態化(他社への初動案内枠が開かれない)
予防のために契約前に決めておくこと
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レインズ運用の明文化
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登録予定日、**登録完了の証憑(物件情報提供書面)**の提示期限。
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価格・広告文変更時の反映期限(例:翌営業日まで)。
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他社客付けの受け入れ条件
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物件確認の標準SLA(例:当日内に回答/内見日程は原則48時間以内に提示)。
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オープンな内見枠(週末の◯時–◯時は他社も予約可)を事前設定。
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活動報告のフォーマット
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週次でPV/問合せ/内見数/競合の動きを数値で報告。
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断り理由(価格・立地・設備など)を定性で分類し、次アクションを明記。
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広告方針の共有
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掲載媒体と開始日、写真点数、間取り図の描き直し有無を合意。
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“他社広告可否”のルールと手順を明文化。
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面談で聞くべきチェック質問
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**過去6か月の客付け比率(自社:他社)**は? 両手比率が高すぎないか。
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物件確認への平均応答時間と、社内SLAは?
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レインズ登録日と証憑の提示タイミングは?
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直近の反響データの共有方法は? ダッシュボードや定例資料はあるか。
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“他社からの内見依頼を断らない”社内方針を持っているか。
販売開始後に効く“可視化”の工夫
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反響ログの共有:いつ・誰から・どう依頼が来たかを簡易台帳で可視化。
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内見カレンダーの共同管理:他社も予約しやすいスロットを固定。
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写真・文言のA/B:反響が鈍いときは翌週までに差し替え、効果を数値で比較。
それでも疑わしいときの手当て
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一般媒介への切替:複数社に“同条件”で動いてもらい、露出を最大化。
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窓口の一部外部化:内見受付のみ第三者受付(BPO/予約システム)にして透明性を担保。
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価格運用のトリガー設定:内見◯件未達なら△%見直し等、事前合意に沿って機械的に運用。
まとめ
囲い込みは“売主の選択肢”を狭め、価格・スピード・交渉力を損ないます。
レインズ運用の証憑化/他社客付けのSLA化/週次KPIの共有という“仕組みの透明化”が最大の予防策。契約前の取り決めと、開始後の数値運用で、余計な疑念を寄せつけない販売体制を作りましょう。