「査定額=そのままの売値」と思っていませんか?
実はこの2つ、役割も決め方も別モノ。
査定額は“取引事例や需給から導く、近い将来成立しやすい価格帯”。
一方の売出価格は、市場に提示する希望価格(戦略価格)です。ここを正しく理解すると、強気すぎて長期化…も、安売りで後悔…も避けやすくなります。
1. 用語の整理
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査定額:周辺事例・成約傾向・物件属性から導く「妥当な成約想定価格」。通常はレンジ(例:3,800〜4,100万円)で示される。
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売出価格:実際にポータル等へ掲載する価格。反響テストや交渉余地を織り込む「戦略的なスタート値」。
2. 価格がズレる主な原因
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競合在庫:同条件の類似物件が多いと強気は通りにくい。
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買い手の融資環境:金利・審査厳格化で予算上限が変わる。
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物件の個別要因:方位・眺望・騒音・管理状態など“写真に写らない価値”の差。
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販売戦略:初動30日の露出量・写真品質・内見導線づくりで反響が変動。
3. よくある勘違い
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「査定額=最低保証」ではない:買取保証とは別。媒介の仲介取引では市場反応次第。
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「高く出せば粘れば売れる」も誤り:長期化→価格改定の履歴が残り、交渉で不利に。
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単一社の査定で決め打ち:算定モデルや事例選定で差が出るため、複数社比較が前提。
4. 売出価格の考え方(例)
査定レンジが3,800〜4,100万円だとします。
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短期×反響重視:3,980万円で出し、2週間のPV・内見状況で微修正。
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期間に余裕:4,180万円の“テスト提示”→初動が鈍ければ早期に4,080万円へ軌道修正。
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確実性重視:3,880〜3,980万円で広く反響を取り、競合出現前に先行成約を狙う。
鍵は「初動30日」のデータ運用。PV・問い合わせ・内見率(問い合わせに対する内見移行率)を週次で確認し、根拠ある価格調整を行います。
5. 進め方の型
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机上査定を複数社:レンジ感と根拠(事例の質)を比較。
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訪問査定で現場補正:眺望・騒音・日照・管理履歴で上振れ/下振れを確認。
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媒介前にKPI設定:初月のPV/内見目標、価格改定のトリガー条件を合意。
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初動運用:写真・間取り・文言、広告露出を毎週改善→データで意思決定。
ワンポイント:査定書で必ず見るべき3点
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事例の鮮度:直近6〜12か月の成約事例が中心か(売出事例だけはNG)。
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補正の透明性:駅距離・築年・階数・方位などの差をどう補正したか。
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在庫状況の分析:同条件の販売中物件と比較し、自宅の優位/劣位が示されているか。
→この3点が弱い査定は、売出後の価格運用でも根拠が崩れやすいサインです。
まとめ/次の一手
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査定額=市場が受け入れやすい成約想定、売出価格=戦略のスタート値。
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失敗を避ける最短ルートは、複数社査定でレンジを“数値”で把握し、初動30日をデータで運用すること。
まずは机上査定で現在の相場レンジを確認し、そのうえで訪問査定→売出価格の設計へ進みましょう。
(このページでは、初回ハードルの低い複数社一括の机上査定に進めます。相場の“ものさし”を手に入れてから、売出価格を戦略的に決めてください。)